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こんな良い商品がなぜ売れないんだろう。
責任のなすり合いばかりでした。

第2章 営業パーソンの役割


 1.「商品」とはどのようなものか
 2.「商品の価値」とは
 3.デフレ経済と「商品の価値」
 4.営業パーソンは商品の伝書バト
 5.営業パーソンの「説明責任」
 6.営業パーソンの役割は「商品情報を正しく伝えること」
 7.ニーズに基づいた営業
 8.提案型営業、コンサルティング営業における顧客ニーズ
 9.約束を守ることが信頼感の醸成に必要
 10.短期的な視点を脱却し、長期的な信頼感を
 11.ドゥ・アプローチの重要性


1.「商品」とはどのようなものか

 ここまで、営業活動とは「商品」を販売営業することだと記述してきた。ここで言う「商品」とはどのようなものであろうか。フィリップ・コトラーのマーケティング理論を参考にして、「商品とは何か」を考え、問題を整理しておきたい。

 コトラーは、「拡張された商品概念」という考え方を、「商品化社会」という現代社会の特徴を前提にして、提唱している。

ここで言う「商品化社会」とは、あらゆるものがあたかも「商品」として社会的に流通することを意味している。すなわち、「拡張された商品概念」では、@モノとしての有形の商品、だけでなく、A無形のサービス、B知的財産として知られるアイディア(情報)、さらには、C政党やプロ野球チームのような組織、そして、D我々一人一人の人間、までが「商品」とされる。「商品」というのは狭義には「モノとしての商品」であるわけだが、それを、サービス、アイディア、組織、人間にまで拡張して考えようとしている。実際、現代社会においては、これらの「拡張された商品概念」のほうが一般的に通用するとみられ、現代社会に特有な商品概念だと言える。こうした商品論としての考え方が、コトラーのマーケティング理論全般に色濃く反映されている。

それでは商品の販売先、購買者というのはどのように考えることができるのだろうか。これは企業活動というものを考えれば分かることだが、一般的には、BtoB、BtoC、BtoGという言い方がされる。この場合、「B=ビジネス」「C=コンシューマ・最終消費者」「G=ガバメント・政府」であり、「BtoB」は「ビジネスtoビジネス」、「BtoC」は「ビジネスtoコンシューマ」、「BtoG」は「ビジネスtoガバメント」ということになる。こういう独特な言い方は、「商品」の販売先、営業先としてそれぞれ、「企業(組織)」「最終消費者」「政府・行政」があることを示している。

この用法からも分かるように、営業活動をする場合、その販売先にはこの三つが考えられるのであり、この『営業パーソン読本』で語られる「商品」や「営業」、また、「営業対象」などは、これらを前提としたものである。そういうように整理して、この『営業パーソン読本』では論述されている。

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2.「商品の価値」とは

 それでは、「商品」と言うのはどのような要素からでき上がっているのだろうか。コトラーは、その構成要素を「コア」「形態」「付随機能」の三つに分類している。すなわち、「コア」は顧客の本質的なニーズを満たすための、根本となる機能や価値のことである。「形態」はコアに付随する製品特性やスタイル、品質、ブランド、パッケージングなどのことである。「付随機能」はアフター・サービスや保証など付加的な要素のうち、顧客が価値を認めるものをいう。例えば、自動車であれば、「コア」は運搬機能、「形態」は色やスタイル、燃費、安全性、速度など、「付随機能」は保証や保険、カー・ローン、アフター・サービスなどがこれにあたる。

これら3要素のうち、マーケティング戦略上どれが最も重要かは、製品特性や競争環境によって異なる。製品の導入期には「コア」や「形態」の要素で差別化が可能であっても、市場が発達して類似製品が出回るようになると、「付随機能」での差別化が重要になる。

 コトラーは別の個所で、「包括的な商品概念」という考え方を提唱している。ここでも商品そのものだけを、商品全体と見ではいない。すなわち、「消費者が購買し、所有し、消費することで消費者が満足できる対象で、それには付属物、サービス、ブランド、包装などが要素として含まれる」と定義される。別の言い方をすれば、そうした「包括的商品概念」で考えられた商品全体の有用性というものが、「商品の価値」だと考えられる。

たとえば自動車の例であれば、運搬機能が十分に果たせることが当然ながら「商品の価値」であるが、エコ意識の高まりや安全志向によって、形態である燃費や安全性が「商品の価値」を決める重要な要素になりつつある。そうした「包括的な商品概念」全体が「商品の価値」となるのである。

 消費者(顧客)は、こうして考えられた「商品の価値」を認めることによって、購買を決定することになる。「商品の価値」に見合った「価格」で購買することになるのである。

 この「商品の価値」は、時代とともに変化すると考えられる。例えば日本では、1990年前後のバブル経済下においては、色やスタイルというものが特に重んじられた。高級品が飛ぶように売れるという状況下で、ブランド・イメージと言うものが重視された。そして、前述したように、エコ意識の高まり、安全志向・健康志向の高まりで、その後は、こうした価値観にマッチした商品が「価値ある商品」として重要視されるようになっている。

そして、2010年の今日、再び「商品の価値」は問い直されていると思う。その価値観の変化とともに、デフレ経済の中で、「商品の価値」に見合った「価格」という側面で、変化が起きているのである。ここでも現在の経済社会における、「商品の価値」の過渡期としての変遷が見て取れるのである。

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3.デフレ経済と「商品の価値」

2010年の現在、2007年のアメリカのサブプライム問題に端を発した世界的不況の中で、特に日本社会においてデフレ経済が進行している。このことが示しているのは、「商品の価値」の評価としての価格が、値下がりしているということである。たとえば、ある「商品」が、以前は1万円の価値があると見られていたのに、現在は8千円の価値しかない、という現象がデフレ経済である。この価格傾向が日本社会を覆っているのが、デフレ経済だと思われる。

 その顕著な例は、百貨店の凋落という現象に示されている。以前は百貨店に置かれた商品は、その商品を購買する顧客によって信頼されていた。そしてその価格も適正なものであると、商品の評価としての「価格」についても固い信頼を得ていた。しかし、デフレ経済が進行する現在、百貨店に置かれた商品の、評価としての価格が高すぎるのではないかという不信感が、消費者(顧客)の間にまん延している。特に百貨店の売り上げの中で大きなシェアを占める衣料品においては、ユニクロなどの専門量販店の安さが、百貨店に置かれた商品の、高すぎるという意識を表面化させてしまっている。それが百貨店に対する不信感を募らせ、凋落の最大の原因となっているのである。現在、百貨店もまた、商品の価格を下げる傾向にあるが、「ときすでに遅し」という感はいなめない。

 こうした現象は、百貨店の商売だけでなく、デフレ経済の中であらゆる場で起きている。数年前までは、サラリーマンが食べる昼の定食は、800円くらいだったのではないだろうか。それが、コンビニで弁当を買えば、400円前後で一食を賄えるのである。また牛丼、天ぷら、うどん、そばなどのチェーン店を利用すれば、500円以下で満腹になるのである。ここでも、デフレ経済が進行していることをうかがわせている。こうした状況下で、商品の価値が見直されているのであり、その結果、価格の下落が顕著になっているのである。

 こうした日本の商品価格の下落傾向は、「商品の価値」自体が減少しているという現象ではない。そうではなく、「商品の価値」自体は、商品開発の進展によって以前よりもむしろ大きくなっているのであり、その評価としての「価格」が下がっているのである。むしろ、以前の価格が高すぎたのであり、現在の低い「価格」は、正当な評価だと考えるべきではないだろうか。消費者(顧客)が信頼・信用できる「価格」になりつつあると思うのである。そして、「商品の価値」に見合ったリーゾナブルな価格だと思えたとき、消費者(顧客)は、その商品を購買するのである。そういう消費者行動を強めているのである。

 確かに、デフレ経済が消費不振の中で進行しており、そのため、経済の収縮を招いているのは事実であろう。しかし、商品に対する正当な評価としてのデフレ経済であるとすれば、悪い現象としてだけとらえる必要はない。現に、この価格下落で恩恵を浴している日本人も、私も含めてかなり多いように思う。

「商品の価値の評価としての価格」と考えるならば、企業の営業活動としても、できるだけ正当な価格、すなわち「商品の価値」に見合った「リーゾナブルな価格」というものを設定する必要がある。そのことが、営業活動をする場合の、営業パーソンにとっての心得るべき要点なのである。

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4.営業パーソンは商品の伝書バト

企業が産み出し、消費者(顧客)に販売する商品について、それを商品説明によって消費者(顧客)に正しく伝えるのが営業パーソンの基本的役割である。ここでは、商品説明というのは、前節で述べた「商品の価値」を伝えることであり、すなわち営業パーソンは、「商品の価値を伝える伝書バトだ」、ということを述べていきたい。営業パーソンは、消費者(顧客)に商品を伝え、運ぶ、「商品の伝書バト」なのである。

「商品の価値を伝える」と記述したが、この場合、「商品の価値を『正しく』伝える伝書バト」と言い換えたほうが良いかもしれない。「『正しく』伝える」とは、価値をより高く、過剰に伝えることとはまったく違う。すなわち営業パーソンの役割は、その商品の長所を、つまり価値の高さを誇張して伝えることではなく、正確に、「正しく」伝えることなのである。それが営業パーソンの役割としてもっとも大切なのである。当然ながら、消費者(顧客)が商品に対して感じる疑問についても、「正しく」対応し、伝えなければならない。

 これまで、企業の営業活動は、利潤を追求するという企業目的が強調されるあまり、商品の価値について、高く、過剰に伝えても構わないという傾向を持っていた。そのため、商品の価値を「正しく」伝えることは、二次的なことだとされてきたように思う。その結果、おおかみ少年の比喩を用いれば、消費者(顧客)は「またあの会社の営業パーソンは、過剰に、長所ばかりを強調して、時にはウソを交えて説明している」と、徐々に信用しなくなっているのである。そして、「営業パーソンの言うことなど信用しない」という不信感を、消費者(顧客)は持ってしまっているのである。

 その不信感から脱却するためには、営業活動の目的や営業パーソンの役割というものを改めて構築する必要がある。すなわち、「商品の価値を『正しく』伝えることが営業活動の目的であり、営業パーソンの役割である」ということを再認識する必要がある。それが営業パーソンの職業倫理として、まず最初に強調されるべきことである。

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5.営業パーソンの「説明責任」

 前節で、営業パーソンは企業やその商品の「伝書バト」だと述べた。すなわち、消費者(顧客)に分かりやすく商品説明をし、「正しく」伝えるのが営業パーソンの中心的役割なのである。売れるかどうかということ以前に、商品について消費者(顧客)に「伝える」プロセスが大切なのである。

 これを消費者保護法と整合性を持たせながら述べれば、企業には消費者(顧客)に対して説明責任(アカウンタビリィティ)があるということになる。

 ここで「説明責任」とはどのようなことを意味しているのかを述べることにしよう。

「金融商品取引法」という法律がある。1948年に制定された証券取引法の改正法であり、2006年に施行されている。この法律には、証券市場における有価証券の発行・売買・その他の取引について規定されている。

すなわち、証券会社や銀行などの金融商品を販売する金融会社の営業パーソンは、原価割れなどのリスクを、消費者(顧客)に説明することが求められている。金融会社に課せられた商品についての説明責任である。消費者(顧客)は、そのリスクを十分に理解して購買しなければいけないわけで、ここが消費者保護法と言われるゆえんである。

 この法律は、金融商品についての消費者保護法であるが、こうした消費者(顧客)に対する説明責任は、いくつかの法制度となっている。しかし、法制度となっているかどうかは別として、それぞれの業界の会社に対して義務となっていると解釈することができる。すなわち、営業パーソンは、法律で規制される以前に、理念として、商品についての「説明責任」を持っているのである。それが、営業パーソンが「伝書バト」であることの意味であり、意義であると考えられる。

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6.営業パーソンの役割は「商品情報を『正しく』伝えること」

 ビジネス倫理の側面から考えると、いわゆる技術者にも専門職としての職業倫理が考えられている。モノづくりなどの技術において、もっとも大切なのは安全性であるが、安全であるためには、正確で、偽りのないデータをもとに、モノとしての商品(製品)を製造することである。技術者という職種の人が守らなければいけない職業倫理である。

 営業パーソンにおいてもこの点は同じことが指摘できる。営業パーソンは、正確で偽りのないデータを消費者(顧客)に提示することが大切である。それが、営業パーソンにとっても守られるべき職業倫理だと考えられる。

商品の商品説明の表示において、「デメリット表示」というものがある。具体的には、たばこの箱に「健康に害を与える恐れがある」という表示をする例がよく取り上げられる。また、分譲宅地、分譲住宅およびマンションのパンフレットにおいては、販売しようとする物件について、日照などの環境条件に影響を及ぼすおそれのある建物の建築または宅地の造成計画で自己の計画に係るものがあるときは、その旨とその規模を説明しなくてはいけないとされる。これも一種のデメリット表示である。

 売り手と買い手の間にある情報ギャップを埋めるのが営業パーソンの義務だとし、また、「商品の価値を消費者(顧客)『正しく』伝える」のが営業パーソンの役割だとすると、その商品の有用性、優位性、メリットなど、ポジティブな商品情報を伝えるだけが役割なのではない。あくまでも「商品を『正しく』伝える」ことであり、商品のデメリットやマイナス面も、「正しく」伝えることが大切なのである。「このような要素がデメリットとしてありますが、その分、これだけ低価格になっています。そして、お客様のニーズ合っています」、などというセールス・トークに基づき、「『正しく』伝える」ことが大切なのである。

売り手である営業パーソンは、買い手である消費者(顧客)よりも一般的には情報を多く持っている。そういう意味では営業パーソンのほうが有利な立場にある。そして、多くの情報をもっている営業パーソンが、商品の優位性を誇張して営業しても、営業パーソンに対する信頼感を醸成することはできない。

商品のデメリット面の「説明責任」が法律で定められていることも、業界団体の自主規制で定められていることもあるだろう。ただ、それらの規制がない商品においても、営業パーソンとしては、職業倫理としてのその精神、理念を大切にしなければならないと考えられる。

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7.ニーズに基づいた営業

 営業パーソンの営業活動において、もう一つ大切なのは消費者(顧客)ニーズに基づいて実行するということである。どんなに優れた商品が仮にあったとしても、それが消費者(顧客)の求める商品でなければ、営業活動は成立しない。そのため、消費者(顧客)を前にして、営業パーソンによってまず行われなければならないのは、どのような商品を求めているかを探索することである。そのことが次の営業パーソンの職業倫理である。

 製造業を例にして考えてみよう。私が製造業の営業パーソンだったとして、もしその商品が売れたら、「ありがとうございます」と感謝の言葉を述べる。それによって会社から報酬をもらっているのであるから、当然のことかもしれない。

それでは買った側の消費者(顧客)はどうだろうか。もしその商品が生活や業務に役立つもので、適正な価格ならば、そのモノとしての商品は、生活を豊かにしてくれるのである。そのため、売った営業パーソンに対して、消費者(顧客)の側から、「ありがとうございます」とお礼の言葉が述べられることがあってもよいはずだ。それは消費者(顧客)が求める、ニーズに合った商品が購買できたときに発せられる、消費者(顧客)側からの感謝の言葉である。

営業パーソンとしては、そういう気持ちに消費者(顧客)がなるように商品を勧め、購買してもらうことが大切なのである。相互に感謝の言葉が述べられる消費者(顧客)との関係を構築することが、営業活動の原点であり、そこに重要な職業倫理としての考え方がある。

ところが現在、「売る側の感謝の言葉」は心得として強調されているのに、「買った側の感謝」は、ほとんど聞かれない。「買ってやったのだから、営業パーソンの側からお礼を言うのは当然のことだ」とばかりに、感謝の気持ちが伝えられることは少ない。こうした事態が多く見られる理由は、営業活動において、消費者(顧客)が求めているニーズが把握できていないためなのである。

企業(組織)の本来の社会的役割は、「消費者(顧客)の生活や仕事を豊かで充実したものにする」というものである。もう一度、その原点に立ち返り、消費者(顧客)が求めている商品はどのようなものかを探索したいものである。消費者(顧客)ニーズに基づいた営業活動と、ニーズを探索できるという能力を持った営業パーソンが求められているのである。

営業パーソンは、消費者(顧客)のニーズに即して営業活動をしなくてはいけない。「この商品にはこういう限界やデメリットがありますが、お客様のニーズには十分対応しています。そして、他の商品よりはこれだけお安くなっています」といったセールストークによる営業活動が大切なのである。とかく営業パーソンは、品質のより良い商品、より高額な商品を推奨しがちである。しかし、消費者(顧客)のニーズを満たしていれば、そちらの安価な商品を勧めることがあっても良い、と考えられるのである。

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8.提案型営業、コンサルティング営業における顧客ニーズ

消費者(顧客)ニーズに基づいた営業ということを前節で述べたが、こうした考えからは、営業というのは、営業パーソンの持っている商品を押し付けるのではなく、消費者(顧客)がどのような商品を求めているか、そのニーズを探索することから始まるべきことを示している。別の角度から言い代えると、ニーズを把握した後に、「お求めの商品には、当社のこの商品が恰好のものだと思います」「当社の商品をこのように使えば、お求めの商品として使えます」という文脈で営業活動が行われることを示している。これは、一般的に言われているところの提案型営業とかコンサルティング営業という領域の営業ノウハウになると思われる。

具体的に示すことにしよう。家屋の屋根に取り付け、家庭の電気需要に対応できる太陽光発電は、地球温暖化という環境問題が深刻化している現状において有力な商品になっている。あなたが太陽光発電を販売する営業パーソンだとして、その導入を検討している家庭に営業に行ったとしよう。

 もちろん環境に優しいシステムであることが説明されるであろう。ただし、その家庭で消費される電力の全てを、この太陽光発電システムでまかなえ、かつ余るとすると売電ということが可能になるはずである。また、これまでガスに頼っていたガスコンロを電化することも可能になる。電化を一層進めた家庭内のシステムを構築することができるようになる。そういうシステムとしてのトータルな提案が可能ではないだろうか。また今は、行政からの支援があり、助成金を申請することもできるかもしれない。そういうことも含めて、経済性についても説明できるはずである。これは別の言い方をすれば提案型営業であり、対面で消費者(顧客)の相談に応じるコンサルティング営業といえる。

 もう一つの具体例を示すことにしよう。あなたが生命保険の営業パーソンだとして、消費者(顧客)に対して保険の営業をすることにしよう。現在は、訪問勧誘員は少なくなっているので、保険会社の窓口で営業すると想定してもかまわない。そこに消費者(顧客)が訪れたのである。

 その場合、営業パーソンであるあなたは、消費者(顧客)の家族構成、一家の収入の見通し、それぞれのライフステージに必要な経費などを聞き出しながら、その家庭に合わせた保険商品を提案することになるだろう。また、消費者(顧客)の求めに応じて、将来的な経済的不安に対応できるように、商品を組み立てることになる。そして購入の意思決定をもらうまでには、さまざまな相談に乗って、より適切な保険商品を組み立てることになる。こうした営業ノウハウが、提案型営業であり、コンサルティング営業である。

 現在の営業パーソンに求められているのは、単に商品の有用性を主張するのではなく、消費者(顧客)のニーズに基づいて、消費者(顧客)の身に立って、そのニーズに適切な使用方法などを提案する、あるいは、相談に乗る形でのコンサルティング営業である。このことは営業パーソンの現代的ノウハウとして強調されることでもあるが、そのノウハウとも言える営業方法は、職業倫理としても重要であることを、ここで強調しておきたい。

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9.約束を守ることが信頼感の醸成に必要

 営業パーソンに対する信頼感を醸成し、長期的な取引を可能にする営業活動をする場合に、もう一つ重要な職業倫理は、「約束を守る」ということである。

 「約束を守る」と言うと、「面談の時間に遅刻をせずに守る」と言ったことが取り上げられることが多いが、それ以上に取引として大切なのは、「納品の期日・時間の約束を守る」ことではないだろうか。

 例えば、印刷会社にとって大切なのは、契約した印刷物が正しく制作されているか、と同時に、納期が重要であるという。これは少し考えれば分かることであり、例えばその印刷物がキャンペーンのためのカタログだったとして、それがキャンペーンに間に合わなかったら、そのカタログは無用になってしまう。印刷会社にとっては品質と同じくらい納期が大切なのである。そのため、印刷会社の営業パーソンは、可能な納期を提示し、契約して、納期を守ることが必須な要件となるのである。その納期が守られなければ、契約違反となり、支払いを受けることができなくなるのである。

 印刷会社ほど重要な要素でないとしても、ほかの製造業でも納期が大切なことは十分に想像できる。そして、消費者(顧客)が求める納期が、自社で可能でない場合は、ここでも営業パーソンの職業倫理としては、取引を断るという姿勢が大切なのである。約束が守られそうもないときは「断る」ということも、営業パーソンが持つべき、信頼感の醸成方法だと考えられ、一つの職業倫理と言っても良いかもしれない。

また、BtoCの業種であっても、その商品が消費者(顧客)のもとに、なるべき早く届くようにしなければならないし、サービス向上の一つの要素となっているのである。ここでも、一度約束した納期は、厳密に守ることが営業パーソンとして大切なのである。

 納期以外にも話したことにウソがないこと、商品や取引について約束を守ることが、営業パーソンには大切なのである。「約束を守る」ことによって、営業パーソンは消費者(顧客)から、信頼感を獲得できる。そして、長期的な取引上の付き合いを可能にするのである。

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10.短期的な視点を脱却し、長期的な信頼感を

営業パーソンの職業倫理として、長期的視点に立った営業活動の実践ということをここで強調しておきたい。すなわち、多くの場合、営業活動と言うのは短期的な取引ではなく、長期的に継続する取引なのである。企業と企業の取引、すなわちBtoBの場合は特に長期的な取引になりやすいし、BtoCの場合も現代のマーケティング理論などでも長期的視点に立った営業(販売)活動というものが重視されている。

そういう長期的視点に立った場合、一つ言っておきたいのは、短期的には営業が成立しなくても、次の取引に、すなわち長期的な取引に結びつくことのほうが大切だという考え方である。

営業パーソンに対する、あるいはその企業の営業活動に対する信頼感というものを短期的に考えることはできない。「あの営業パーソンの言うこと(商品説明)はいつも正しい」と消費者(顧客)が感じたとき、営業パーソンと消費者(顧客)は、お互いに信頼感で結ばれることになる。長期的視点で両者の関係性は良好なものになるのである。

商品についてデメリットな説明をするということも、長期的視点に立った営業パーソンの営業方法だと考えられる。同じようなことだが、消費者(顧客)が求めている商品がない、あるいは営業パーソンが持っている商品が消費者(顧客)ニーズに合っていない、と思われる場合、営業パーソンは、その取引を断ることがあっても良い、と考えられる。これも短期的取引ではなく長期的取引をする、すなわち、長期的な信頼感の醸成には不可欠な営業方法ではないかと考えられる。「あの営業パーソンはこの取引を断ってきたが、言うことは正しかった。結果として良かった」という満足感を消費者(顧客)に与え、営業パーソンに対する信頼感を持つようになると見られる。

消費者(顧客)ニーズに合った商品を探すこと、そしてそういう商品がなかった場合は、申し訳ないとしつつも、潔く取引を断ること、そういう姿勢が営業パーソンの職業倫理として大切なのである。

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11.ドゥ・アプローチの重要性

「ニーズに基づいた営業」「提案型営業」「コンサルティング営業」「約束を守る」という推移で記述してきたが、これらのテーマはそもそも営業パーソンの「職業倫理」と言えるものだろうか。読者の中には、単なる営業の「ノウハウ」であり、「職業倫理」ではないという疑問を持たれる方がいるかもしれない。

 記述が飛躍してしまうが、小・中学校などの生徒への教育場面で、例えば「廊下を走らないようにしましょう」と言って指導するよりも、「廊下を静かに歩きましょう」というように指導したほうが効果的だという考え方がある。つまり否定形ではなく、肯定形で指導したほうが良いと考えられている。同じように、「ほかの生徒に対していじめてはいけません」というよりも、「ほかの生徒に対してやさしく接しましょう」というように指導したほうが、効果は上がると考えられているのである。ここでも、否定形よりも肯定形が尊重されている。

 職業倫理を考えるときも同じことが言えるのではないだろうか。すなわち否定形よりも肯定形で、職業倫理を考えてみようと思うのである。別の言い方をすると、「〜〜をしてはならない」すなわち、「ドント・アプローチ」よりも、「〜〜をしたほうがよい」すなわち、「ドゥ・アプローチ」の視点に重点を置いて考えてみようと思うのである。

 「職業倫理」というと多くの人が、「法律に違反しないように活動する」というように考えがちである。だからこそ、企業のコンプライアンス(法令遵守)として法律を学習して、それに違反しないことが目的となりがちなのである。

 そういう法律を守るという視点からは、どうしても義務的に、「〜〜をしてはならない」(「ドント・アプローチ」)になりやすいのである。そしてビジネスにおける倫理を論じる多くの論者が、そういう落とし穴にはまっているのである。

 そのため、私としては「職業倫理」をなるべく「〜〜をしたほうがよい」(「ドゥ・アプローチ」)の視点で語ってみようと思う。この第2章では、その背後にある理念を含めて、「〜〜をしたほうがよい」(「ドゥ・アプローチ」)の考え方を追究したのであり、それが営業パーソンにとって重要な「職業倫理」なのである。

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第3章 企業と個人の関係    
『営業が楽しいと初めて感じました。』   
部下からのそのひと言に感動を覚えました。

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第1章 営業活動の現状
自分をだまし、お客様をだまし、もう疲れました。
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