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第1章 非倫理的指導の実例

1.A社の経営者の場合

 A社の経営者が、社員に指示した業務命令の概要をここに記述する。

 A社は一般消費者を顧客にしている。そして、A社と競合する会社が何社かあり、その競合会社も同様に一般消費者を顧客にしている。

 その中の一つの競合会社の社員(アルバイトかも知れない)が、ある日、A社の主要な商圏で、ビラを配って顧客を勧誘していた。その場所は、A社の本社近くの駅頭であり、やくざ言葉を使えば、A社の「縄張り」と思しき場所である。その駅頭の歩道で勧誘のビラ配りをしていたのである。

 その旨を知ったA社の社長は、自社の若い社員に対して、そのビラ配りをしている数人に近づき、話し掛け、ビラ配りを妨害し、退散させるように指示したのである。暴行を加えてでも退散させろという指示は、さすがに出していなかったようだが、妨害して退散させろというのだから、暴行ぎりぎりのところまで行っても良い、という指示であった。

 A社の若い社員数人は、その指示に従い、ビラ配りをしている競合会社の社員に近づき、話しかけ、嫌がらせをして、退散させたというのである。社長の指示に忠実な社員は、勇んで嫌がらせ行為をしたかもしれない。そして、退散させることに成功した社員は、社長から何らかのお褒めの言葉をもらったかもしれない。また中には、その行為に戸惑いを持ち、疑問を持ちつつ、社長からの指示だったので仕方なく実行した社員もいただろう。社長の業務命令なので、断ることは相当に勇気のいることだったに違いない。

 読者の皆さんは、このA社の社長の指示をどのように評価するだろうか。相手は競合会社の社員なのだから、嫌がらせをして退散させることは、「社長の指示として正しい」とお考えだろうか。そして「社長の指示に従うのは、愛社精神を発揮する絶好の機会であり、社員として当然である」とお考えだろうか。

 私はそうは思わない。競合会社の社員とのけんかをけし掛けたとしか思えず、経営者の指示は、倫理的に考えて、決して許されることではないと思う。正当な業務命令などでは決してないのである。嫌がらせをして来いという指示をする経営者は、自社の商品について、自信を持てないでいるとしか思えない。自信があれば、いくらビラを配られようとも、自社の顧客を奪われることはないのである。そして、言い争いになり、どちらかが暴力行為に打って出たらどうだろうか。どちらかの社員が、けがでもしたら、一体だれが責任を取るのだろうか。

2.B社の社内の出来事

 次はB社で実際に起きたことと、勤務中の社員の態度についてである。

 ある日、ある社員が勤務中にトイレに行った。ごく日常的な行動である。すると、トイレの壁に一枚の張り紙があった。「最近、トイレットペーパーをむやみに撒き散らし、トイレを汚す社員がいます。もしそうした行為を見つけたら、すぐに幹部にお知らせください」という張り紙であった。

 この事態について、もちろんトイレを汚した社員と思しき人物の行為が非難されることは言うまでもない。しかし、その人物がなぜそのような行為に出たのかを考えると、単なる悪質な行為とばかりに片付けられない。その行為の背後には、その人物のB社に対する恨み、辛みを感じるのである。そして、B社の、一人の社員がそうした行為に走らざるを得なかった、拙劣なマネジメント体制、管理体制を感じるのである。

 実際、そのB社の職場の雰囲気は相当悪いものであった。一例を挙げると、勤務時間中に同僚の席に行き、「いまは雇用情勢が良いのでしょうか。私も就職活動を始めようかと思う」と話すのである。夜の居酒屋での会話ではない。勤務時間中である。仕事中にそんな会話が行きかっているのである。B社の職場は、働く社員たちの厭世的な気分に満ちているのだ。

 B社は現在の社長が起業したオーナー企業なのであるが、そのために、社長の「鶴の一声」で物事が決まっていく。その劣悪なマネジメントの例を挙げると、幹部に登用された社員が、いつの間にか降格されてしまうといった事態が頻繁に起きるのである。働き方の適正な評価によって処遇が行われるなら良いのだが、社長の気分でそのことが決まってしまうのである。

 そして、社員の離職率は、職場で転職の会話が行われていることからも分かるように、非常に高いのである。2〜3年の間には社員が総入れ替えしてしまうといった離職率の高さである。ある社員は、幹部からパワハラを受けて辞職すると語っていたが、社長はもちろん、幹部の間でもパワハラと指摘できるようなマネジメントが多く行われている。良い組織文化をもった会社かどうかは、離職率が目安になると言われるが、そういう視点からは、B社は良い会社、良い職場とはとても言えない。そしてオーナーとして君臨する社長のマネジメントが、離職率の高さを顕在化させているのである。まずもって非難されなくてはいけないのは、その社長なのである。

3.会社は「経営者の城」

 ある上場企業の人事部に所属する社員の話を聞いたことがある。その社員は次のように語っていた。「当社は独特の組織文化を持っている。当社はいわゆるオーナー会社であり、オーナー経営者の価値観が組織に色濃く反映されている。社員に対するマネジメントも、あるべき社員の姿という面でも、オーナーの価値観が強く反映されている。そのことはプラスの面も多くあるのであり、オーナーが起業した会社なのだから、その価値観が強く反映されるのは致し方ない。そのことは、弊害もあるだろうが、良い面もあるように思う」と語っていた。

 私はこの話を聞きながら、会社組織と言うのは、経営者の価値観、倫理観、経営に対する考え方、理念といったものが色濃く反映されると思い知った。つまり、「会社組織は経営者の城である」ということである。中小企業はもちろんそうだが、大企業においても、部長は部を経営する経営者、課長は課を経営する経営者、それらの部課の上に、経営陣や経営者がいると考えれば、事情は似ているのである。

 どうも会社組織と言うのは、時として、社会に通用する一般的な価値観や倫理観が排除されやすい。「経営者の城」になりやすい。そしてその「城」は、「治外法権」にさえなる場合が多いのである。「経営者の城」の中では、経営者の価値観や倫理観が良くも悪くも会社組織を決定付けてしまうのである。ときには、法律に抵触するような「治外法権」にさえなりがちなのである。そういう恐れを、会社組織という「城」は持っているのである。そういう会社組織の性格に、経営者は気づかなければならない。そして、経営者は職業倫理として、謙虚さを保持していなければならない。

 会社組織に所属している社員は、経営者が「右」と言えば「右」に、「左」と言えば「左」に行きがちなのである。あるいは、経営者が悪しきマネジメントを行えば、あっと言う間に、会社組織は堕落してしまう。逆に、社会的に真っ当な価値観、倫理観をもっていれば、健全で、成長性のある、正しい会社組織になる可能性は強い。

 そういう視点に立つと、冒頭にあげたA社の経営者の指示は、経営者の負の価値観、倫理観が表面化した事例であることがわかる。また、B社のやる気のない社員があふれた、雰囲気の悪い職場の事例は、経営者の劣悪なマネジメントに起因しているのである。

 このような会社組織は、決して稀ではない。「ブラック会社」などという用語が就職活動をする学生の間で流布されているようだが、実は、「ブラック会社」というのは、想像以上に多いのだと私は思う。

 ここから分かるのは、現在の日本社会では、会社組織のトップとしての、経営者の価値観、倫理観が強く問われているということである。

 会社組織もまた社会的存在である。経営者は社会的にも通用する、正当な、正しい価値観、倫理観を持たなくてはならない。そして、その正しい価値観、倫理観を、会社組織全体に浸透させなくてはならない。正しい組織文化を作らなくてはならない。そういう思いが、「経営者の職業倫理」というテーマで文章を書こうとした、私の動機なのである。

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